クリニック通信
108. 平和という静けさに
2025/8/2
焼かれてしまいそうな日差しが続くなか、涼しい顔をして今年も8月がやってきます。
国立近代美術館の企画展『記録をひらく 記憶をつむぐ』を見に行きました。どうしても今、このタイミングで見たいものでした。
大規模な企画展なのにチラシも宣伝もない。ただ静かに。けれど確かな意思を持ってその企画展は開催されています。
入り口の案内文に絵画は「遅いメディア」だと書かれていたのが印象的でした。絵画がメディア? と不思議に思いましたが、実際に見てなるほどと納得しました。今回の企画展では「遅いメディア」としての役割を存分に発揮していました。
人々が忖度したもの、扇動されたもの、恐れたもの。何を選んだのか、選ばなかったのか。そして、選べなかったのか。
そういうものが、細やかに描かれていた気がします。塗りかえられることなく。
どっしりとした何かを胸に抱えながら、美術館の4階にたどり着きました。そこには眺めのよい部屋があって、大きな空が広がっていました。
あまりにも静かで、あまりにも平和そのもののような光景に、胸がぎゅっとなりました。
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