クリニック通信
003. 長引く咳→慢性咳嗽
軽い風邪の咳(3週間以内を急性咳嗽)だと思っていたら、咳だけが残ってしまった。しばらく様子を見ていた(3~8週間を遷延性咳嗽)けど、まだ治らない…。
咳が8週間以上続く場合、慢性咳嗽(まんせいがいそう)といいます。
そもそも咳は、気道・肺に分布する咳受容体が刺激されて起こる反射で、咳刺激をもたらす要因や機序は疾患によって違います。
すなわち慢性咳嗽の原因は様々で、その原因に合った治療が必要なため疾患の診断がとても重要です。
まず、咳が出るきっかけや痰が絡むか、などの問診(咳の出現時間が特徴的病態を表すことがある!)と胸部の聴診所見やX線写真を診断の足がかりとします。
そして、診断しやすくするため、喀痰の有無と胸部X線写真の異常の有無で疾患を分けるアプローチをします。(例外も多いため慎重に)
(1)痰が少なく(乾性咳嗽)胸部X線写真で異常が無い場合
→ 逆流性食道炎・ACE阻害薬の副作用・声帯機能異常・喉頭アレルギー・後鼻漏・心因性・百日咳(まれ)など
(2)痰が多い(湿性咳嗽)が胸部X線写真で異常が無い場合
→ 気管支喘息・咳喘息・アトピー咳嗽・感染後咳嗽・気管支異物など
(3)乾性咳嗽で胸部X線写真に異常がある場合
→ 間質性肺炎・肺結核・肺癌など
(4)湿性咳嗽で胸部X線写真に異常がある場合(無い場合もあり)
→ 慢性気管支炎・︎副鼻腔気管支症候群(慢性副鼻腔炎に慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症などが合併した疾患)・肺癌・肺結核・気管気管支瘻など
このように、咳が長引く疾患は多種多様で、診断は専門医でも手こずるケースが多いのです。我慢せずに、早めにご相談下さい。
それぞれの治療法などについては、改めて解説していきます。